あの日の麦茶

2019-06-22 · 雑感戯言

今から30年前の4月下旬。
そろそろ就職活動を……という時期、学科事務室で友人と過ごしていたときのことです。



新刊の本棚を眺めていると、友人が言いました。

「この人の作品集出たんだ。面白い建築家だよ」

その場で手に取り、読み始めました。



当時はバブル絶頂期。
日本的なものがあまり顧みられない時代でした。

そんな中で目にした、日本的なデザイン。
とても新鮮に映りました。



特に心を惹かれたのは、
「名島邸」や「高槻の家」のような、白い漆喰壁と切妻屋根の住宅。

建築の理論も分かりやすく、文章も面白い。
写真で拝見するお顔は穏やかで優しそう。



出江先生に師事し、いつか自分もこのような設計ができるようになりたい。
そう思うようになりました。

5月末。
意を決して出江事務所へ電話を入れ、面接を受ける運びに。

6月、面接の日。

女性スタッフが運んでくださった、
小ぶりなフロストの冷茶グラスに注がれた麦茶。

その折り目正しい立ち居振る舞い。
瀟洒なグラスからにじみ出る、美意識。

それだけで、緊張はさらに高まっていきます。

やがて、ガタン、とドアが開く音。

先生が入ってこられた瞬間、
かつてないほどの緊張で頭の中が一気に高揚しました。

そして――

なぜここまで叱られなければならないのか……と思うほど、叱られました。

叱られているうちに、なぜか先生の機嫌は少しずつ良くなり、

「まあ、試しに夏休みの1ヵ月間、OPEN DESKに来なさい。」

と、首の皮一枚つながることに。



あれから30年。

あの日、面接室で飲んだ麦茶の味は正直覚えていないのですが、
先生がドアを開けて入ってきた瞬間の緊張は、
今でも昨日のことのように思い出すことができます。


2019.06.22 原田久

 

  この記事を書いた人 

  原田 久( 建築家 / 一級建築士 )

有限会社 ディクタ建築事務所 代表取締役

愛知県北設楽郡設楽町出身
豊田工業高等専門学校建築学科卒業後、大阪の建築家・出江寛氏に師事。
出江事務所退社後、ハウスメーカー、ゼネコンを経て1998年設計事務所開設。
豊橋・豊川・蒲郡・新城等の愛知県三河地域で、住宅専門の設計事務所として
クライアントと一緒に楽しく丁寧な家づくりをしています。

1998~2004 豊田高専建築学科 非常勤講師
1998~2001 利幸学園 中部ビジネスデザインカレジ インテリア科 非常勤講師

ブログ(プロジェクト進行状況の紹介)  https://www.dikta.jp/blog/
コラム(家づくり全般について)     https://www.dikta.jp/column.html 

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