今年も一年間ありがとうございました。

2025-12-30 · 雑感戯言

年末最後のブログとして、今年の建築業界を振り返りながら、これからの住まいづくりについて少し率直に書いてみたいと思います。

ご存じのとおり、建設費の高騰は依然として続いています。資材価格の上昇に加え、物価全体の上昇、そして深刻な職人不足。もはや「一時的な問題」とは言えない段階に入っていると感じています。

さらに今年は、建築基準法が大幅に改正されました。制度そのものの趣旨は理解できる一方で、現実には申請・審査業務が著しく停滞し、確認申請に想像以上の時間と労力を要する状況が続いています。

先日、70代のベテラン建築士の方から「これを機に辞めることにしたよ」と聞きました。長年第一線で設計を続けてこられた方です。
その方から冗談交じりに「原田さんは辞めるような年齢じゃないから、まだまだ頑張らないといけないね。大変だね(笑)」と言われ、思わず苦笑してしまいました。

正直に言えば、法改正についていくのは必死です。条文を読み込み、運用を確認し、検査機関や行政とやり取りを重ねる日々が続いています。設計そのものに集中できる時間が削られる感覚も、少なからずあります。

こうした背景もあり、費用面から新築が難しく、「リフォーム」という選択を検討される方は今後さらに増えていくと思います。ただし、そのリフォームについても、今回の法改正の影響は避けられません。

実際、一定規模以上のリフォームでは確認申請が必要となりますが、そのハードルは想像以上に高いのが現実です。
検査機関の方に状況を伺うと、「確認申請が不要な範囲にどこまで抑えられるか」という相談が大半を占め、申請に至るケースはほぼないとのことでした。
結果として、リフォームの確認申請自体が、ほとんど行われていないという状況が生まれています。

これは決して“抜け道”を探しているわけではなく、現実的な住まいづくりを成立させるための、切実な判断だと感じています。
制度と現場、その間でバランスを取りながら、最適解を探る――そんな時代に入ったのだと思います。

大変な状況ではありますが、それでも「どうすればできるか」を考え続けるのが、設計者の役割だと私は考えています。
無理なことは無理だと正直に伝えつつ、その中で出来る最善を尽くす。その積み重ねが、結果としてお客様の安心につながると信じています。



今年も多くのご相談、ご縁をいただき、ありがとうございました。
来年もまた、静かに、誠実に、ひとつひとつの住まいと向き合っていきたいと思います。

どうぞ皆さま、よいお年をお迎えください。

2025.12.30 原田久

豊橋、豊川、蒲郡、岡崎、豊田、設計事務所と創る注文住宅|有限会社 ディクタ建築事務所

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